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黒豆海苔巻

主に北海道で散歩してるブログ

噛み締めた金沢

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 大混雑のバスタ新宿を抜け出した夜行バスは、8時間をかけて金沢駅に到着。朝6時、頭の中には濃い霞が立ち込めており、到着の感慨も何もない。それでも駅前のアパホテル内にあるエキスパに開店と同時に押しかけ縮んだ体を湯船で伸ばし、モーニングセットを食べたりしていると、だんだんと気持ちも晴れやかになってきた。まずは何をしようか。ほとんど予定も、下調べもない旅行である。

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 人の少ない朝のうちに街並みを楽しもうとロッカーにバックパックを預けて駅を出ると、突然のやかん。「やかん体。転倒する。」というオブジェで、待ち合わせ場所としておおいに利用されているようだった。

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 ここはなんの建物なのだろう?このダジャレのためだけに建てたのか、それに、施工メーカーはどこだったのか…。芸術と思おうとすればなんでも芸術である。

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 などと歩いていると、大野庄用水沿いに連なる長町武家屋敷跡周辺につく。早朝ということもありもちろん人は少なく、水路を流れるさららとした音も心地よく落ち着かせられる。ややけたたましい鳴き声に頭上を見やると、昨日ライフリストに仲間入りしたばかりのオナガが電線に止まっており、早速心が掻き乱れる。

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 こんな街並み・建物がぽつりぽつりと続くのだからたまらない。澄み切った朝の光を反射する黒い瓦もきれいだ。美味しそうな和菓子屋が総じてまだ営業時間前というのを除けば、最良の時間帯に来たことは間違いないだろう。

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 ぼんやりと用水路の続くままに歩いていると怪しげなギヤマンの輝き。鳥居には尾山神社とある。神社だと…?

f:id:Kuromame:20170505082032j:plain 神社でした。

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 菊桜がわんさか咲いていた。利家とまつが祭られるこの神社には苔むした庭園なんかもあり、非常に雰囲気が良く、すぐに気に入った。

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 神社の裏に抜けると金沢城公園だ。ここはとにかく広かったが、でんと控える五十間長屋はなかなか荘厳で見ものだ。鉛瓦のせいか屋根は鈍く光り、壁の白さと相まって不思議な風合いである。

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 土塀の構造はこうである。怪獣や妖怪の体内構造図を思い起こさせる。

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 僕はうっかりすると際限なく歩き続けてしまうがそろそろ10時だ。早めの昼にしよう。

 昼食は近江町市場で新鮮な刺身を、あわよくばノドグロなど食べてしまおうという魂胆であったが、どこもすごい混雑である。狙っていた回転寿司屋は長蛇の列で、8時についた客がまだ並んでいるという状況。他のどの店も行列は必至、仕方なく少し離れた店まで歩き北陸満喫丼なる海鮮丼を食べる。美味しい。美味しいのだが、北海道と北陸では獲れる魚や甲殻類が似通っているのだなと贅沢な既視感を感じてしまう。ノドグロ摂取はここでは果たせなかった。

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 犀川まで出てきた。川というものはいつ見てもいいものだ。左右に建つ家々に風情があるとなお良い。などと清少納言のように思いを馳せてしまうほど、この日は良い天気であった。

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  さて、金沢に来た目的はこれだ。佐賀県立美術館から始まり、金沢21世紀美術館に来ていた『池田学展 The Pen -凝縮の宇宙-』である。この後東京にも巡回するのだがそちらは高島屋での開催ということで、大規模な会場で見ておくなら今しかないかも、と足を盛大に伸ばしたのだ。僕が現世で一番気になっていた作家の作品をついに生で見れるとあり、チケットへの行列でずっとそわそわしていた。

 結果としてここまで来たのは大正解、最高の体験になった。一つ目の展示室に入りやや遠めにモノクロの線画を眺めただけで突然顔面がぞわっとしたのをよく覚えている。画集ではよくわからない一本一本の線の形にもいちいち感心し、個々の物体のサイズ比も遠近感もやや無視して部分部分を積み上げる描き方でこんな世界が完成していくのには圧倒されっぱなしだ。細部を食い入るように見続け、ついに最後の展示室に掲げられた新作『誕生』に一歩引いて対峙した時にはものすごい感動が襲ってきた。全景の美しい色合い、一部を切り取ればどこまでも引き込まれそうな解像度は、唯一無二の世界観だと思う。少し泣きそうなくらいだ。結局4時間近くこの展覧会を見ていた。

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 そんなわけで、有名なプールも混み合っているし今度にしようと、フラフラになって美術館を後にする。道すがら兼六園にも立ち寄ったが、残念ながら今回は池田学展の印象が全て上回りあまり記憶にない。また来ることにしよう。

 朝から歩き回りさすがに疲れた。16時と早いがビールを飲もうと、金沢駅前の「金沢おでん黒百合」へ。大衆居酒屋といった感じのカウンターに陣取り、郷土料理を次々と頼む。さっさか食べ物が出てくるのは嬉しい。ここのおでんは優しい出汁がしっかり浸みていてとてもうまい。どじょうの蒲焼はなるほど。ふぐの粕漬けの前には我慢できず地酒の劔を頼む。何よりも美味しかったのは治部煮で、とろりとしただし汁にわさびを溶かすとたまらない。 地元の人も多くおり、良い店だった。

 そのまま駅構内の寿司屋「鮨 歴々」が2件目。やはりノドグロも食べたいと、ノドグロの巻物をつけた8貫セットにした。テンポよく握られるままにするすると食べるのだが、うまい。特にヤリイカは細かな切れ目を入れてあり、とろりと甘味を強く感じられるのが驚くほど美味しく、うっかりおかわりしてしまった。あいにく旬のものはないということだったが、嘘か誠か金沢がもっとも消費しているというバイ貝をいただいた。大満足で店を出るとまだ17時すぎ。それでも行列ができ始めていたので、良いタイミングで入ったようだ。

 この後、少し離れた津幡の宿まで移動。風呂を独り占めしてから酔い覚ましに畦道を歩いてコンビニへ。暮れゆく空の下、蛙の声に囲まれながら金沢での1日の満足感を噛み締めたのだった。

 

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 お土産のひとつ、茶菓工房たろうの「もりの音」。慎ましい甘味が非常に美味しい。