黒豆海苔巻

主に北海道で散歩してるブログ

城から島へ

 澄み渡るように晴れて暑くなった。まずは広島城に向かおう。

 と、その前に広島護国神社に参拝に行くと、泣き相撲の準備が進んでいた。毎年ニュースで見るあれはここでやっていたのか!と少し感動。

 ここはカープが必勝祈願に来ることでも有名らしく、鯉像がある。2匹が寄り添うように泳ぐ「双鯉の像」は恋愛成就のご利益があるらしい。陶器の鯉の口に丸めたおみくじを突っ込んだ「鯉みくじ」もあったので記念に購入したところ小吉。「脇目をふらず正直に働くべし」とのことで身を引き締める。

 さて、広島城毛利元就の孫である輝元が10年をかけて築いたものとのこと。しかし完成翌年に輝元は山口の方に転封されたとのことで、ままならないものである。

 シャチホコは派手な色合いで、金箔も貼られていた。不思議なことに、城から少し離れた武家屋敷の井戸跡から出てきたそうである。それも発見は2009年とごく最近で、地下水に浸っていたおかげで保存状態もよかった。「隠されていたってことですか」と思わず尋ねると、「ミステリーですよね」と解説ボランティアのおばさんは不敵に笑った(実際は輝元の後任が来たときに丁寧に埋納したのでは、とのこと)。

 天守からは広島の街が一望できる…のだが、すっかりビルやマンションが城の高さを追い越していることを実感する眺めであった。

 

 広島城から新白島駅に抜け、そのまま宮島口へ。まずは腹ごしらえで、『椛』で汁なし坦々麺を食べる。これも広島が発祥の名物だ。コシのある細麺に、適度なシビレが効いたタレがよく絡み美味しい。私にはこのくらいのマイルドさが優しい。

 そのままフェリーで宮島に向かおう。揚げもみじを齧っているうちにあっという間に到着する。旅行気分にあてられてレモンクリーム味を食べたが、揚げもみじはきっとあんこが一番美味しいんだろうな、というのが今後に向けた学びであった。

 宮島で下船して、人混みをかき分けて、なにはともあれ大鳥居に向かう。干潮の時間を狙ってきたのである。潮の引いた浜を歩いていると潮干狩りをしている様子もちらほらと目に入る。厳島神社の敷地との境界のような杭に「杭より神社側で貝を取らないでください」と注意書きがある。ここが貝の命運を大きく分けるラインなのだ。

 近づいてみると鳥居のスケールに慄く。高さは16m強で、体長5mというキリンでも悠々とくぐれるようだ。また、柱はクスノキの自然木でできているとのことで、確かに輪郭がうねっているのがよくわかる。2022年に改修工事が終わったばかりで、綺麗なものである。

 その後はひたすら買い食いなどしてぶらつく。タイムサービスで3つ入りという声に促されるまま蒸し牡蠣を貪り、宮島ブルワリーで飲み比べをして酔っ払うこの姿を、かつて修学旅行で宮島に来た高校生の自分自身に見せつけてやりたい。当時は大会前だったのでボールを持ち込み早朝の坂道でランパスをしたこと、宿の鯛の刺身が美味しく生魚嫌いを克服したことなど、意外と宮島での印象は色々ある。自由に宮島を満喫する大人になれてよかったね。

 もみじまんじゅうは止まることなく生み出され続けていた。もみじクロワッサンこともみクロなど、バリエーションも拡大の一途を辿っているようだ。

 めちゃかわ映えソフトクリームもすごい人気であった。購入時に「2種類のうちどちらをどちらが食べるのですか?」と性別確認をされ、なんだろうと思ったら妻の方にはでかいハートのモナカ生地が付いている。演出が細かくてすごい。

 山の方に歩いて行くとpanpanyaみがある看板を見かける。魚屋が軒を連ねていたからこうした町名になったようだ。宮島は少し山側に行くだけで一気に静かな街並みになる。

 そういえば鹿もたくさん見かけたが、一枚も写真を撮っていなかった。エゾシカの洗礼を受けすぎ、物珍しさがなくなってしまったのかもしれない。

 などと時間を潰し、行列が途切れたのを見計らって厳島神社を参拝する頃には、大鳥居もすっかりに海に浸かっている。ゆっくりと櫓櫂舟が鳥居をくぐっていく。

 朱色が映える美しい社殿。海に向かって作られた姿も含め、世界遺産登録基準のひとつ「人類の創造的才能を表現する傑作」を満たしたというのは納得である。

 そんな神社の拡大に大きく寄与した平清盛の像はフェリーターミナルの脇に佇んでいる。堂々とした立ち姿だが、その後の運命を思うと複雑なものである。

 最後は穴子とカキフライで締めて、宮島口へと戻るのであった。