黒豆海苔巻

主に北海道で散歩してるブログ

QUEEN + ADAM LAMBERT The Rhapsody Tour 北海道

 私とQUEENの出会いは2004年の『Jewels』である。キムタク主演のアイスホッケードラマの主題歌に「I Was Born To Love You」が使われたことからQUEEN人気が再燃し、その折に発売された日本企画盤ベストだ。これをかつてQUEENファンだった母が購入し、何度も家やら車中やらでかけられていた。

 その後、ハードロックやプログレを好んで聴いた時期にQUEENと2度目の出会いを果たす。この頃は『戦慄の王女』から『華麗なるレース』までのアルバムを特に好んで聴いた。目まぐるしい曲構成や、どうしているか想像もできない多重録音、レッドスペシャルの太くくぐもったような独特な音色に惹かれた。中古アルバムを探してブックオフを駆け巡ったものである。

 3度目の出会いは2018年の映画『ボヘミアン・ラプソディ』。これまでスタジオワークばかり追ってきたが、この映画でQUEENはとんでもないライブバンドでもあるのだなと認識させられた。一緒に手拍子したい。シンガロングしたい。Ay-Ohしたい。

 2024年の来日ツアーに札幌公演が含まれていると知った時は驚いた。福岡じゃなくて札幌?迷わず先行発売日にチケット申し込みをした。こう言ってはなんだが、オリジナルメンバーのブライアンとロジャーは高齢でもう一度日本公演があるかわからないし、あったとしても札幌に来る可能性は低い。行かない理由はないのだ。

 席はSS席の前方であったが、端の方で角度がついていてやや見にくい。席に着いた時こそ、もう少し正面側がよかったなどと文句を言ったが、この後そんなことなどどうでも良くなる。

 北海道公演だけのスペシャルゲストとして、道産子出身GLAYが前座で登場。時間通りにサッと現れ、45分ほどの時間を「グロリアス」に始まる有名曲で畳み掛ける。「HOWEVER」の後に「Winter, again」のイントロが流れたところで、冬の札幌でこれを続けてやってくれるのかとぐっと会場の熱量が上がった感じがしたし、ボルテージの上がる「誘惑」で締めてくれてめちゃくちゃテンションが高まった。限られたスペースや機材設備でやられたのではと思うが、端正な声と演奏で、北海道をキーワードに会場との一体感を作ってくれた。みんなが知っている曲をこれだけ持っていて、高いクオリティでライブできるとはすごいバンドだと思わされた。

 そして19時ごろからSEでしっかり焦らされ、いよいよQUEENの登場。GLAYに比べて音圧が一気に高まり、一音目から真打登場感を強烈に感じた。この席からだと演者本人はとても小さく見えるし、花道に行かれると横の人で全く見えなくなるのだが、そんなことは一瞬でどうでも良くなった。QUEENがこの場で演奏していることに嬉しさが込み上げ身体の反応がおかしくなり、鳥肌を立てながら満面の笑みを浮かべる奇人と化してしまった。

 冒頭の「Radio Ga Ga」からこちらのギアは上がりっぱなしである。この手拍子をみんなでできることで、夢が一つ叶った。続けて「Hammer To Fall」「Fat Bottomed Girls」などと名曲が途切れることなく続く。Are you gonna take me home tonight?もI Want It Allもしっかり歌って、勝手にどんどん一体感を感じていく。

 アダム・ランバートとの演奏はほとんど聴いたことないままライブに臨んだが、パワフルな歌唱にどんどん圧倒されていく。フレディとはもちろん違うのだけど、紛れもなくQUEENであるという説得力がある。何より伸びやかなハイトーンがすごくて、曲にドラマティックさを加えてくれる。「Bicycle Race」でのパフォーマンスでもあったように、表情豊かに観客を盛り上げてもくれる。素晴らしいフロントマンだった。

 会場が暗転し、花道にブライアンひとりが現れる。「札幌は42年ぶり。みんな成長したね。僕はしてないけど」と語りかけてからアコギを構える。「Love Of My Life」だ!急いでスマホのライトをつけて頭上に掲げる。大合唱まで至ったかわからないが、1ヴァース目を懸命に歌ったところで、ブライアンが優しく「Perfect」と言ってくれたのには嬉しくて涙が出そうだった。「ライトをありがとう。キャンドルのようだ。星々のようでもある」と言われてスタンドの方を見やると美しい光が散らばっている。「マジックを見せよう」と画面に現れたのはフレディ。最後の1コーラスをフレディと歌う。この曲はこの日のハイライトのひとつだろう。

 「古い曲」と言って続けて始まったのは「Teo Torriatte」。この曲を日本で歌わないでどうするとこれも合唱。当時の日本ツアーでの歓迎っぷりに感銘を受けて作ってくれた曲である。今回もそれに負けじと歓迎しているぞという思いが伝われば嬉しい。Let our candle always burnのところでも会場のスマホライトがまだ灯っていたのが印象的だった。

 Youngロジャーがティンパニーを叩き、Oldロジャーがドラムセットを叩くソロタイム。アレンジの効いた「Tie Your Mother Down」。物理的に火を吹くブライアンのギター。アダムが歌うことで感傷さが増す「Is This The World We Created?」。このライブで好きになった、煌びやかなエフェクトが楽しい「A Kind of Magic」。繰り返すFind me somebody to loveの合唱。素晴らしい瞬間だらけでライブは進む。

 本編終盤の「Show Must Go On」は、これこそアダムの歌の威力が存分に発揮されたといえる曲だった。天井を突き抜けんばかりのものすごい熱唱が、曲調と相まって感情を揺さぶる。どうかこのショウをずっと続けてくれ。

 そして大いに盛り上がる「Bohemian Rhapsody」で本編終了。すごかった。でもあの曲もあの曲も聴いていないと、手拍子でアンコールを続ける。

 すると画面にはフレディが現れ、Ay-Ohの時間。煽られるままにコールアンドレスポンスをくり返す。最後、Thank youと言ってくれるかと思ったらFuck youで、会場は笑いに包まれる。

 アンコールは「We Will Rock You」「Radio Ga Ga」「We Are The Champions」の3連続。もう最後だと腕を振り上げ、声を張り上げる。この手拍子も、この合唱も、ずっと憧れていたものだ。自分の住む街で実現できるとは夢のようで、本当にここまできて演奏をしてくれてありがとう。そんな思いで観ていたことが少しでも伝わっていればと願わずにおれない。「God Save The Queen」が流れる中、花道まで出て挨拶してくれたメンバーに、改めて拍手でお礼を伝える。ありがとう。ありがとう。

 余韻に浸る帰り道、そういえば私の結婚式のプロフィールムービーで、妻のパートはGLAYの「SOUL LOVE」を、私のパートは「I Was Born To Love You」をBGMに使ったことをはたと思い出した。その2グループの共演を、そしてその曲自体を、二人で体感できたのは必ず一生の思い出になるだろう。