盆休み、思い立って第4回瀬戸内国際芸術祭に行ってきました。当初は3日間じっくり巡るつもりだったのですが、台風10号を避けるため、1日早く切り上げる予約と変更しました(結果的にこれは正解でしたが残念)。
高松に着いたのは朝5時過ぎ。小樽で山登りをした後、夜の便で神戸に飛び、夜行のジャンボフェリーで海を渡ったのでした。フェリーはいたるところでゴザが広げられ雑魚寝する大混雑でした。
時間もあるし…と高松駅まで歩くものの、あまりの暑さに負けました。何はともあれ初うどんとして駅前の『味庄』へ。朝6時からやってます。讃岐うどんに対してのイメージに比べてコシが弱めなのが朝に優しい…。出汁の旨味があまりに豊かなのには感動しました。
フェリー乗り場へ。朝日に輝く『Liminal air -core-』が綺麗。
まずは朝一の直島行き高速船のチケットをすんなり入手。夏会期の鑑賞パスポートも購入し、船を待ちます。北海道になれた身体からは、すでに汗が止まりません。
乗船。きらめく海と島々を眺めているうちに、あっという間に寝てしまいました。
30分で直島の宮浦に到着。鎮座する『赤かぼちゃ』が出迎えてくれます。
港の向こうの『直島パヴィリオン』も目を惹きます。遊星からの物体Xって感じがして良い。
すぐ横はちょっとした砂浜です。綺麗な海で、島に来たという実感がふつふつと湧いてきます。
海に脚を浸すと、ひんやりとして気持ちが良い。このためにサンダルを履いてきたんですよ。夏だ…。
9:15からの地中美術館の入場券を予約していたので、広木池の方へ向かいます。海で濡らした足元があっという間に乾く暑さ。わんわんと止まないセミの声を聴き、海を見下ろしながら歩を進めます。
地中美術館、数点の作品を収め、それらを最適に見せるためだけに設計されたというのが圧倒的でした。薄暮に吸い込まれるような感覚になるタレルの作品はぜひ体験してほしいです。モネの部屋のタイル、デ・マリアの作品を荘厳にさせる陽光の取り入れ方、迷い込むような導線など、安藤忠雄による建築の力もすごい。
地中美術館の後はバスで本村に向かいます。時間の都合上、ベネッセハウス周辺は泣く泣くカットしたのですが、車窓から見かけたベネッセハウスビーチの美しさに臍を噬む気持ちでした。
直島ホール近くの『The Naoshima Plan 2019「水」』へ。足湯ならぬ足井戸水を体験できる涼の場所。かつて共有資源だった井戸水を使い、人の集まる場所が作られています。芸術はコミュニケーションを媒介するものでもあります。
家プロジェクトの作品をいくつか回ります。「はいしゃ」は好き勝手が過ぎて楽しい。「石橋」の滝の絵はなかなか圧倒されました。
「護王神社」のガラスの石段。夏のひかりの中で、溶けてしまいそうな滑らかさで輝いていて美しいです。
街並みも良い。路地と古民家がゆるゆると続きます。
本村のフェリー乗り場も作品になっています。ここから豊島行きの高速船に乗るのです。
この高速船の窓は少し低め。波しぶきを見て20分ほどで家浦港へ到着。
昼食のため豊島鮮魚で焼き魚定食。北海道ではそうそう見ない、大きな鯛の上半身。淡白ながらうまい。ほほ肉が特にうまい。
バスで唐櫃岡へ。島キッチンでアカペラのイベントが開かれており、集落のどこからでも綺麗な歌声を聴くことができました。
さて、まずは山に入り、ボルタンスキーの『ささやきの森』を目指します。この杉林が、北海道とはまた違う日本感を醸します。
見てみたい気持ちも少しある。
途中のお寺にある怪しい石像。彼そのものなんだけど、全然違うようにも見える…。
ひいひい言って登りつめた先が『ささやきの森』。誰かにとって大切な人の名前が記された風鈴が、林間を抜ける風で軽やかな音を立てる…はずだったのですが、あいにくの無風。この日のささやきはとても小声でした。
集落の方では『ストームハウス』が良かった。「嵐体験館」という感じで、嵐の日の民家での様子を追体験できます。雷の振動で震える戸板、打ち付ける雨に音を立てるガラス窓、バケツに溜まっていく雨漏りの水滴など、本当に嵐の中にいるかのようです。台風がよく来るであろうこの島の暮らしに思いをはせ、また同時に、いつぞや経験した嵐の夜が思い出されてきます。快晴の屋外に出ると、スタッフの方が「明後日にはどの家でも同じ体験できますよ」と笑っていて、この地方に生きる強さのようなものを感じました。
さらにバスで唐櫃浜の方へ。我慢できずに買ったコロナビールの瓶を片手に、『心臓音のアーカイブ』へ向かいながら海水浴場で黄昏ます。
うれしいことに、コウイカの骨を見つけました。
『心臓音のアーカイブ』、暗い部屋に響く誰かの心臓音、それに合わせるように点滅を繰り返す白熱電球。バイタルサインなのになぜか死を感じるような恐ろしい場所でもありました。一人一人の心臓音がまったく違うのにも驚きます。
駆け足気味で後ろ髪を引かれますが、唐櫃の港から島を離れます。ちょっと暑さにやられていたこともあります。
デッキの席で海風にあたって30分強、高松港に戻ってきました。とりあえずホテルにチェックインし、シャワーで汗を流し、コインランドリーで洗濯。
そのあとまた出て行って、高松美術館でやっている『宮永愛子:漕法』へ。
時が止まった中にある流体を見るような感覚。
儚く美しいビジュアルでした。サヌカイトを叩いて透き通った響きを聴くことのできる作品があったのですが、誰かが叩くそれらの音を背景に彫刻作品を見ていると、儚さが一層際立ちます。
こうして一日目が終了。疲れと暑さに負けてしまったところがあるので、金陵を飲みながら英気を養い、二日目に備えることとします。