札幌芸術の森で開催中の『札幌美術展 佐藤武』に行ってきました。紅葉はどしどし進み、曇天の下でシックに色づいていました。
佐藤武さんは札幌・石狩を拠点にされる画家。こんな風に、なんだか親しみのある雪景も描かれています。
初期にはマグリット的シュールレアリスムな絵や人物画を描かれています。ところが、インドのジャイプルを訪れたのを機にモチーフががらりと変わります。
崩壊の瞬間を固定した一連の作品は、『インセプション』のスローな爆散シーンを連想させます。いまにも動き出しそうな建築物を描くとはどういうこと…。
さらにイマジネーションは広がり、砂漠の廃墟の上空に何やら出現し始めます。遠近の取り方も変えていて、異物感は半端ではありません。
大きなキャンバスに描かれているので、迫力もすごい。まだ観ていませんが『DUNE 砂の惑星』にこうしたシーンが出てくるような気がしてなりません。すごい重低音と一緒に。
最近になると、上空に異物は浮かびません。ただ荒凉とした廃墟が広がっているだけです。
しかしよくよく目を凝らすと、黒い直線が引かれているのがわかります。これは作者の言うところの死線という空間の裂け目であるとのこと。
一度だけこの裂け目を開いたものの、そのさきに広がる宇宙に、もう絵が描けなくなるほどの境地を感じたそうです。茫漠とした雪原から砂漠、そして宇宙に至ってしまえば、究極の荒涼さが広がっていたのかもしれませんね。
これでもかと言うSF的イマジネーションは、実物の大きなキャンバスの前で浴びると本当に強烈でした。とてもおすすめ。