黒豆海苔巻

主に北海道で散歩してるブログ

台湾に上陸していた

 すでに6月のことだが、業務都合で初めて台湾を訪問した。憧れの地に理由はなんであれ行けるとあって楽しみな気持ちであったものの、なんと搭乗予定の飛行機と台風の進路がぶつかってしまいそうな予報。一か八か予定通り乗るか、前後の日にずらすか、議論の末、予定より1日前倒して出国、帰りは予定通りの4泊5日の行程となった。搭乗機変更はEVA AIRのアプリでささっと完了でき、便利な世の中である。

 出発の日、新千歳空港国際線乗り場はあまりに閑散として、一度も待つこともなく搭乗口へ。サンリオキャラクターが溢れかえった可愛いチケットを受け取ったと思っていたら、機体にもしっかりラッピングされている。ほんの数時間のフライトだがしっかり用意される機内食のカトラリーもサンリオ仕様と、徹底的なコラボがされていた。推しのハンギョドンの姿が見えなかったのを残念に思いながら『台湾流通革命 流通の父・徐重仁に学ぶビジネスのヒント』を読んでいるうちに桃園国際空港に到着した。

 宿泊先の南港にはKKdayで手配したタクシーで向かう。高速道路から宮殿のような圓山大飯店や台北101を眺めては感嘆していると、なんだ台湾は初めてかと運転手に笑われた。高速道路を降りると四方八方からスクーターが湧き出てきて、ここでの運転は無理だなと恐れを抱いた。

 ホテルは大変きれいであるし、新旧入り乱れた街並みを見渡せて気持ちが良い。街中でも緑が多く、早朝は聞いたことのない鳥の鳴き声がしており、双眼鏡を持ってこればよかったと毎朝後悔しつつも、実際に持ってこなかったことに企業人としての矜持がにじんていると思っていただきたい。台湾文化で心配なことの一つが「排水管が細くてトイレットペーパーが流せない場合がある」という些細なことであったが、どうやらこのホテルはしっかり流して良さそうで一安心である。

 ひとたびホテルを出ればこんな路地が至る所にあり、なぜだかノスタルジックな気持ちにさせられる。30℃を超える蒸した空気に汗をかきながらコンビニで買った青マンゴーのアイスバーをかじりながら歩くとタイムスリップ感が助長される。

 

 もちろん業務で来ているのだが、日程変更で1日の猶予ができたこともあり、休憩時間を利用して国父記念館を訪れた。コイン型の切符を使う地下鉄で数駅の距離だ。建物のデカさにまず驚く。

 国とは中華民国のことであり、父とは孫文である。台湾には元々先住民がおり、その後漢人の移入があり、そして中華民国の国民が中華人民共和国から半ば逃れるように流入した歴史がある。この記念館は、その歴史のうち、中華民国の歴史にスポットを当てた展示がなされている。時間がなくて衛兵の交代式まで見ることはできなかったが、巨大な孫文像を見上げて歴史に思いを馳せるだけでも満足である。

 庭に鎮座する孫文の頭の上で雀が鎮座していた。孫文をかたどったティーバッグが売られていたりと、しっかり愛される存在であるようだ。国父記念館自体も、水彩画展や舞踏が行われており、文化センターとしての役割をこなしているようである。

 

 中華民国つながりというわけではないが、故宮博物館を訪れる機会もいただいた。蒋介石が大陸から持ち出した膨大な美術品が収蔵されている。

 有名な白菜は出張中で見ることが叶わなかったものの、角煮はしっかり鑑賞することができた。思っていたよりサイズは小さいが、どう見ても角煮。

 どうやって彫ったの…どうやって描いたの…という超絶技巧の洪水を受け止められない。サイズ感をとらえる意味でも実物を見ていただきたいが、感服してばかりで息つく暇もなかった。博物館はとにかく広く、品数も尋常ではないため、とてもではないが見切れなかったのが残念だ。

 

 超絶技巧は寺院でも見られ、これも感嘆するしかない。装飾にがっつり手をかけるのは、なんだか心の豊かさあってのことに思える。

 

 会食のない日は夜市に繰り出した。アクセスの良さで饒河街観光夜市を訪れるも、台風が最接近しており尋常でない雨。果たして店はやっているのだろうかと心配しながら、靴の中までジャポジャポにして向かうと、逞しく営業しており安心。

 まずは牡蠣入りの細麺で温まる。注文すると寸胴鍋からじゃぼりと掬って秒で提供されるのでびっくりしたが、甘く優しい口当たりに不安は消し飛ぶ。にゅうめんのなけなしのコシを引っこ抜いたような麺はツルツルと腹におさまる。癒しの味。飲みの締めで毎晩食べたいくらいだ。

 一番混んでいた屋台で、ルーローハンと何やらゴツい骨を煮込んだスープをいただく(メニューを控えるのを忘れた)。スープは滋味を煮詰めたようで、不思議な甘みに夢中になる。ルーローハンも薄味というわけはないのに軽やかに食べられる。

 夜市名物の射的にも挑戦するが鳴かず飛ばず。いくつか風船を割るも、いまいちルールを掴めないまま、参加賞のイルカのキーホルダーを人数分握りしめ、雨の中をまた宿に戻るのであった。道端でぬらりと光るカタツムリは特大だった。

 評判に違わず食事は総じて美味しかった。会食先のレストランはもちろん、急いで入った駅のフードコートの排骨だって満足できるものだった。ただし辛い料理は、僕にとっては容赦なかったので注意が必要だった。それと、怪しげな雰囲気の家族経営お茶屋で買った高原烏龍茶の茶葉もお土産ではナンバーワンだった。

 

 色々あって、名物足ツボマッサージも体験した。初めはとにかくくすぐったくて悶絶し、次は痛くて悶絶するが、次第に慣れて心地良くなる。このおかげか歩き通しの日程も乗り越えられたのかと思う。

 食べ足りないし見足りないという気持ちを抱えて帰国。業務だから当たり前だが。近く再訪することを誓うのであった。