黒豆海苔巻

主に北海道で散歩してるブログ

シャチとジップラインの旅

 6月の半ば、またもや羅臼にシャチを観に行った。

 3年ぶり2度目の乗船である。前回も弾丸だったが今回も負けじと弾丸。ただし今回は運転交代要員がおり、ちゃんと一泊してくるので、比較的楽であるはずだった。ところが3年での老いがそれを相殺し、やはり移動は大変疲れるものであった。

 今回は午前便を予約したので、8時ごろには羅臼に着かねばならない。仮眠をとって早めに1時ごろには札幌を出発。道東道を阿寒までひた走る。帯広を越えたあたりからの濃霧にヒヤヒヤし、阿寒ICを降りてからはシカとキツネとタンチョウに怯えながら東へ東へ走る。途中、標津の牧草地から走り出たのはウズラのようだったのでテンションが上がったものの、じっくり観察する余裕などない。どんよりした空模様なのは残念だが、7時過ぎには羅臼の道の駅に到着。

 そそくさと受付をして海へと出る。3年前に引き続き、シャチにはすぐに遭遇。あちこちの波間でブローや背鰭が立ち上がっている。

 背鰭の高いオスは特にそうだが、やっぱり大きな生き物だ。星野道夫は、東京で電車に揺られているその時に、北海道のヒグマは山々を歩いているんだろうと思い浮かべる不思議な感覚を記していた。我々が過ごす日々と同じ瞬間、世界のどこかで違う時間が流れていることを意識できる幸せ。僕の場合は、広い海のどこかにこうやって大きな鯨類が息づいていることを思えることがそれにあたるのかもしれない。

 ところで僕は前回の晴れ渡った午後便のイメージで、Tシャツとマウンテンパーカという軽装で来てしまったので、今回は大変に寒い。大臀筋が震えて熱を発そうとしてくれるが、耐えきれず何度か船内に入って、温まっては観察するということを繰り返す。

 一方のシャチは元気で、背面泳ぎをしてみたり、スパイホップをしてみたりする。その度に乗客からおーっと歓声が上がる。

 鳥については前回のような鳥山は見れなかった。ウトウ、フルマカモメ、ミツユビカモメ、ハシボソミズナギドリなどをちらほら見かける。

 乗船時間の9割くらいは常にシャチを視界にとらえながらこの日のクルーズは終了。時期さえ間違えなければほぼ確実に観察できるようだ。陸に戻って、ホッケフライバーガーで軽く腹を満たす。

 羅臼のビジターセンターには今観てきたシャチの全身骨格がある。胸鰭の大きさなど改めて感心する。

 知床峠を通る頃には、すっかり晴れ渡り、気温もジリジリと上がってくる。どうやらどんよりしていたのは羅臼側だけのようだ。スッキリ見渡せる羅臼岳にもいずれ登ってみたいものである。

 お約束で知床五湖にも寄ろう。地上遊歩道はヒグマ活動時期はガイドツアー必須となっており、カムイワッカ湯の滝のアクセスや利用なども含め、知床も観光地としてのルールが変わってきているようだ。この日は午前中にヒグマが出たそうで、木道の利用のみ可能だった。知床連山を眺めながら、ウグイスの鳴きかわしを楽しんだ。

 知床自然センターの裏からフレペの滝への遊歩道も歩く。見下ろした知床の海は穏やかに輝いていた。

 滝までの道はシカが多く、暑くてやってられないのか人がいても逃げる様子がない。親子連れなどはこちらにトコトコ近づいてくるのでどうしようかと思うくらいだ。

 この日は早めに宿にチェックインし、すぐさま風呂に浸かり、ラウンジでビールを飲んで優雅な時間を過ごす。バイキングの夕食をたらふく堪能したらすぐ眠くなり、あっという間に就寝。案の定翌朝は早くに目が覚めてしまい、4時から朝風呂に入り、ラウンジで飲み物を飲んで読書をして優雅に過ごす。なんという贅沢をしているんだ…。

 さて、札幌への帰り道は道央道を通るので、遠軽を目指す。オシンコシンの滝で飛沫をあび、小清水のモンベルでTシャツを買ったりしながらゆっくりと進む。

 せっかく遠軽まで来たのだから、ジップラインをやって帰ろう。スキー場のてっぺんから伸びる全長1,135mのロープを、最大速度70km/hで滑り降りるのである。道の駅の中にある受付でハーネスを装着し、リフトで山頂に向かう。ここのジップラインは一度乗り継ぎがあるので、まずは中継駅までの最初の滑り降りをする。写真だとわからないが結構高くて足がすくむ。ハーネスを滑車に取り付け、腰掛けるような形になってスタート。最初は自由落下しているのではないかという勢いで、思わずおおおと声が出る。その後少しなだらかになり、風を受けて減速し出すと余裕が出て、遠く広がる景色を眺めながら開放感に包まれ大変に楽しい。

 第一ステージがしっかり怖かったので、第二ステージはもうデザートのようなものである。吊り下げられるのも手慣れたものである。滑り降りながら道の駅でお茶をしている見知らぬ人に手を振るディズニーランドムーブもして無事終点到着。めちゃくちゃいい体験だったと余韻に浸りながら、ぶいぶいと帰札したのだった。