仕事で東京、ということでしめしめと『ラスコー展』。土曜日の15時過ぎの訪問でしたが結構な混雑で、入場まで30分ほど並びました。
フランスのラスコー洞窟は、ある少年の飼い犬が落っこちたことで、1940年に偶然発見されました。洞窟内に描かれていたのは、約2万年前にクロマニョン人が残した絵画でした。
これが再現されたクロマニョン人。装飾品や衣服から、高度な技術を確立していたことが伺えます。言われてみて改めて認識しましたが、クロマニョン人もホモ・サピエンスな訳で、姿形は現代人とほぼ変わりません。
続いての見所は、洞窟全体の1/10スケールの模型でしょう。僕はてっきりラスコー洞窟はちょっとした洞穴くらいの規模と思い込んでいましたが、とんでもない、3又に分かれた細長い空洞からなる、全長200mにもなる複雑な作りの洞窟だったのです。大きな展示室の真ん中にどんと鎮座したその模型に驚かされました。
そんなに奥深い洞窟であれば当然真っ暗なわけで、明かりを灯さなければ絵は描けません。この洞窟からはスプーン状の石製ランプが見つかっています。窪みに獣脂を置いて火を灯したとのことで、このように洞窟内に灯りとして火を持ち込んだ形跡はクロマニョン人が最古とのことです。
シカやウシなどが描かれた洞窟はあっという間に観光地化。ひっきりなしに訪れる人の呼吸によるバクテリアや菌の繁殖、見学者のために付けられた空調設備による汚染が進行、保護のために1963年には洞窟は閉鎖されることになりました。
しかし途切れない見学希望に対応するため、1983年にラスコー洞窟そばに部分的な洞窟・壁画が再現されました。この最初の再現壁画は「ラスコー2」と呼ばれます。10年かけて行われた再現作業の展示もあるのですが、完全な手仕事だったことに感嘆します。
この特別展で見られるのは「ラスコー3」と呼ばれる複製です。3次元レーザースキャンなどを使い壁面形状を正確に再現、壁画の模写にはデジタルマッピング技術が使われています。それでも絵そのものは、当時と同じ絵の具を使い、人の手で模写されています。ここではこの「ラスコー3」の壁面が5枚、暗い通路に並べられ、あたかもラスコー洞窟に迷い込んだかのような感覚を抱かせます。
洞窟には「塗って描いた絵」と「線を彫って描いた絵」があります。展示では、この線を光でくっきりと浮かび上がらせることで、壁に描かれた2種類の絵を交互に見せてくれます。ウマのたてがみの細かさなど、この線画が本当に繊細なのには驚きます。また、輪郭だけで描くということがすでになされていたことも面白いです。
このほか、クロマニョン人が残した様々な道具・装飾品・美術品が展示されていました。実利的な道具にもしっかり装飾を施すなど、芸術面に秀でた特徴があったようです。
一方その頃の日本では、世界最古の落とし穴が掘られるなど、また違った面で秀でていたことが示されていたのも興味深かったです。
かなり混み合っていましたが、面白い展示でした。
この後、リニューアル後初めて訪れた地球館を堪能し、飲み屋へと向かうのでした。