黒豆海苔巻

主に北海道で散歩してるブログ

富山への移動とライチョウチャレンジ1日目

 北アルプスライチョウを見に行くことは、幾多ある人生のやりたいことリストの一つであった。行けるときに行っておくべきだよなマインドになり、富山に行くことにした。
 2泊分の荷物を詰めたザックは手荷物持ち込みしようと、保安検査締切近くに新千歳に到着。ところがザックは何度か機械に通され、中身確認となる。あ、軽アイゼンか、と思い至ったがすでに時おそし。もう預け荷物には間に合わないとのことで、破棄か着払いでの返送をするしかない。泣く泣く家に着払いとする。うっかりしていたこちらが悪いのだが、どうも幸先が悪いなとうなだれながら搭乗する。


 富山までは直行便があるのである。飛行機は慰安旅行のような集まりで満席だった。平日の地方への便はこんな感じなのかもしれないなと思いながら、立山を特集した『岳人』を読むうちにすぐに富山上空へ。足元はしっかり曇っており、アルプスを望もうという目論見は失敗だ。富山に降下するところで水田がたくさん見られ、米どころなんだなと実感する。

 飛行機は10分遅れで到着。富山駅までのバスは飛行機を待ってくれるので安心なのだが、補助席含めても満席といった状態になり、荷物を入れたりあぶれた人を降ろしたりでバスの発車は時刻表より30分ほど遅れる。富山ブラックを食べようと思っていたがそんな時間もなさそうだ。

 なんとか富山駅に着いたのは、立山行きの電車まであと20分というところ。これに乗れないと室堂に着くのは夜になってしまう。まずは電鉄富山立山までの切符を買い、急いで好日山荘に走り、チェーンスパイクを入手。パッといけるコンビニもなく、水だけ買って乗車。なんだか幸先が悪いままである。

 立山に向かう車窓から見える空は終始どんよりしており、山並みは見渡せない。田畑にキジを通算6羽ほど見かける。途中途中の駅は味のある古びた駅舎ばぽつんとあるような場所ばかりだが、しっかりと人の乗り降りがある。

 当初の予定では、立山駅でのケーブルカーへの乗り換え時間も少ない。館山駅で急いで室堂までの切符を買いに行くと、臨時便が出ているようで出発まで少し余裕ができた。食堂で軽食でもと見てみるとおやきがあるではないか。白エビコロッケも一緒に買って、昼飯代わりの軽食としてとにかく急いで食べて、ケーブルカーへ。それでも、これで確実に室堂まで辿り着けると確信でき、ようやく人心地つけることができた。

 ケーブルカーの乗車人数はたった3人で貸切状態であった。この時間から室堂方面に行こうとする人は少ない。すれ違うケーブルカーは満員で、山から人を降らせる目的での増便だとわかる。せっかく貸切なので、ここぞとばかりに最前で楽しんだ。

 美女平でバスに乗り換え。乗っている人はやはり少ない。案の定ガスガスの中をずいずい登ることとなった。滝などの景勝地は残念ながら眺望なし。

 ブナ林を過ぎてどんどん登っていくと、だんだん積雪が目立ってきた。何台も対向車線を降っていくバスとすれ違ったが、皆満席だ。そうこうしていると、いつのまにか標高2000mを超えている。

 雪の壁がだんだん見られるようになった。雪の大谷である。さすがに溶けてきていて、11mほどが今の一番高い高さだと紹介があった。

 室堂もやはりガスで眺望は良くない。宿泊先であるみくりが池温泉に向かう道には誰もおらず、霧の中を進むのは少しゾッとする。

 ホテル立山も、シャイニングの舞台のようである。

 遊歩道の雪は緩みシャクシャクで、坂などは足を取られ滑りそうになる。後々振り返れば大した距離ではないのだが、池の向こうに宿が見えた時は安心した。

 ふと少し離れた丘を見やると、第一ライチョウ発見!オスである。本当にいるじゃないかと感激しながら観察。天気の悪い時に出てくるから「雷鳥」という話もあり、どんよりとしているのは怪我の功名と言えなくもない。

 ガアガアというライチョウの声を聞きながら宿に向かって歩いていると、第二ライチョウ発見。こちらはすごく近く、しきりと啄んでいる。こうしてあっさりとライチョウチャレンジは完遂となった。

 ともかく先にチェックインをする。蚕棚ベッドは下段の指定で安心。夕飯は2部制で、後半の部までまだ時間があるため、荷物を減らしてライチョウ探しに出かけることにした。

 

 再度立山ホテルのほうに歩いていると、ちょうど2羽の雄が縄張り争いで追いかけっこをしているところに出くわす。立ち止まって見ていると、1羽がすぐ近くに降り立った。しゃがんで観察すると、なんとこちらにトコトコと近づいてきて、スマホでなんとか収まるほどの近さまで接近してくるではないか。本当に人を恐れない鳥である。しかしこちらが苦労して重い望遠レンズを運んできたのをなんだと思ってるのか、という気持ちである。

 ホテル立山で少し土産物をチェックし戻る頃には、雲が少し晴れて、周りの山々の様子がわかってきた。峰々に囲まれた圧巻のロケーションだ。明日はこのまま晴れてくれると嬉しいものだ。

 みくりが池温泉を通り過ぎて少し登った先でもライチョウ。今のところ全てオスだ。見晴らしのいいところで縄張りチェックをしているので目につきやすいのだ。さて、そろそろ宿に戻ろう。

 第一部の夕食が始まるくらいのタイミングで温泉へ。みくりが池温泉は標高2,410mにあり、日本最高所の温泉宿とされる。内湯は広くはないが、単純硫黄泉の掛け流しで、とてもきもちいい。ここまで移動してきたなというのと、雷鳥見れちゃったなという感慨が染み入る。おじさんが良い湯だなアハハンと歌いながら浸かっており、全くその通りだと思った。

 19時になり食事の時間。ラウンジで待っているとどうやら外は小雨のようだ。食事はとにかくご飯が進むなという感じで、昼飯分を取り返そうと大盛りでおかわりをする。

 食事が終わればもうやることはない。小雨なら夕暮れや星空は厳しいだろう。消灯時間より早く布団に潜り込み、富山の1日目は終了だ。